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DXの先進企業を目指して~DX銘柄グランプリ

   2021.07.26 (月) 10:34 AM

・6月にDXの表彰企業が公表された。経産省と東証の共催で、2015年からスタートした制度である。当初は「攻めのIT銘柄」と名付けられたが、昨年よりDX(デジタルトランスフォーメーション)にシフトし、今年はDX認定制度をベースに、その上位の表彰と位置づけられた。

・DX銘柄の表彰式にリモートで参加した。評価委員会の伊藤委員長(一橋大学CFO教育研究センター長)は、3つの点を強調した。

・1つは、ビジネスモデル(BM)を変えるのではなく、現状を維持することに汲々としていないか。DXに取り組んでも、POC(概念実証)に留まって、踏み出していないのではないか。本気で実践せよ、という意味である。

・第2は、経営者は自らDXを語っているか。社外取締役はDXに詳しいか。デジタルガバナンスで、日本は遅れている。現場と顧客を重視すれば、日本はDXの遅れを取り戻し、リードすることもできると強調する。

・第3は、今回応募した464社(上場3700社中)をみると、戦略的に取り組もうという意欲は分かるが、レガシーシステムの刷新や、人材の育成という点で、まだ課題を残している。DXをもっと推進する「価値協創ガイダンス2.0」を近々公表すると述べた。

・今年の表彰では、DXに優れた銘柄28社(うちグランプリ2社)、特色ある注目企業20社、デジタルによるコロナ対策企業11社が選定された。グランプリの2社は、日立製作所とSREホールディングスであった。この2社について、トップマネジメントのプレゼンを踏まえて、その内容を咀嚼してみたい。

・日立は、1910年の創業以来、小平浪平の精神を受け継ぎ、ベンチャー精神と社会への貢献を追求してきた。リーマンショック後の苦境からV字回復する過程で、社会イノベーション事業に力を入れ、OT(オペレーションテック)とITで強みを発揮しようとした。

・その核となったのがLumada(ルマーダ)で、AIを活用してデータに光を当て、2010年以来1000件の実績(ユースケース)を積み上げてきた。ルマーダを使うことで、さまざまな分野でデータを活かした新しい仕組みを作ることができ、それが効率のアップや価値向上に結び付いている。

・ルマーダはコンテナのようなもので、異なる顧客にも使ってもらえるようになった、と東原会長(CEO)は強調する。OT(リアルなオペレーショナルテクノロジー)とIT(バーチャルなデジタルテクノロジー)を組み合わせて、新しいプラットフォームとしていく。ルマーダはまさにつながりの要となっている。

・今の社会的課題は、日立単独では解決できない。昨年からアライアンスによるソリューションに全面的に舵を切った。環境では、デジタルグリッドやグリーンモビリティ(ディーゼルをバッテリーへ)を作っていく。

・データを活かして、レジリアントなサプライチェーンを作っていく。そのためにグローバルロジックス社を買収することにした。同社は米シリコンバレーに本社をおくIT企業で、アジャイルやクラウドを駆使した「協創型」のアプリケーションやサービス開発を行う。ルマーダとの連携を通してつなげていく。

・2030年を目標に、日立は自社工場のカーボンニュートラルを目指す。その後サプライチェーン全体をニュートラルにしていく。ここでも、ルマーダがつながりのコアになっていくと強調した。日立のAIプラットフォーム、ルマーダの進化と広がりに注目したい。

・SREホールディングスの西山社長は、‘10年後の当たり前を創る’とビジョンを語る。SREは、ソニーの不動産部から独立して創業した。2014年に1名で会社を作り、不動産テックのAIを、自社で使うとともに外部にも提供している。

・不動産業界で、何が最も曖昧で、分りにくいものであるか。それは取引価格である。そこで、不動産の取引価格のデータベースをともに、AIで価格の推定を行う仕組みを作った。2019年にマザーズに上場し、その後1部上場となった。

・不動産の売買データをベースに事業を展開し、ソニーとの技術交流も続けている。DXの推進では、AIによるデータ活用テクノロジーを活かして、他産業へのサービスインもすでに開始している。

・DXで大事なことは、業務プロセスの改善にとどまることなく、ビジネスモデルの革新で新しいビジネスを創造することである。しかも、その新しい市場の拡大を図っていくことが狙いである。

・SREは、自社で不動産のサービス業務を実行しながら、そのDXツールを外販している。すでに金融分野でも使われている。

・日立は社会インフラをDXでイノベーションすると決めた。OTは有しているので、これにITを加えて、リアルとバーチャルの融合でDXによる社会イノベーションを推進していく。

・東原会長は、2014年に中西氏の後を継いで社長になったが、2年を経て、このままではまた大企業病になるかもしれないとの懸念をもった。ビジネスユニットを小さくして、フロント+プラットフォーム+プロダクトで繋げていく。共通の横串としてルマーダを使う。このプラットフォームがDXのコアである。

・DXを推進するには、社員のマインドを変える必要がある。顧客の課題は何か、という顧客起点に発想を変えた。さらに環境、健康、災害など、サプライチェーン全体を価値起点としてみていく。この顧客起点、価値起点が定着してくると、ルマーダが活きてくる。

・今回、DXグランプリとして対照的な2社が選ばれた。かたや大企業の日立、かたやベンチャー企業のSREである。SREは、ソニーから人材がスピンオフした新しい企業である。不動産業界はIT化が遅れていた。不動産テックは米国と比べても遅れている。ここにデータの活用、AIの開発を持ち込んで新ビジネスを立ち上げた。

・大企業もベンチャー企業も、イノベーションの連鎖が求められる。新しいと思ったプラットフォームやそれをベースにしたビジネスモデルも、すぐに陳腐化してくる。大企業にはDXのスピードが求められる。新興企業にはDXの広がりが求められる。

・投資家にとって、表彰は1つの参考にすぎない。次のイノベーションのシンプトン(予兆)をしっかり見い出し、そこに投資していきたい。

 

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