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空間シェアリングエコノミーの展開~TKPのリージャスジャパン買収

   2019.06.16 (日) 11:37 AM

・TPK(コード3479、時価総額1868億円)は、4月に日本リージャスの買収を契約した。世界トップクラスのレンタルオフィス企業であるRegus(リージャス)の日本におけるマスターフランチャイジーとなった。

・これで貸会議室に加えて、貸しオフィスでもブランド力のある事業展開が可能となった。TKP 250拠点、日本リージャス150拠点の合計400拠点を、今後10年で1500拠点まで拡大しようという戦略である。

・買収金額は3.2億ポンド(約460億円)である。のれんを20年で償却すると、年間22億円程度の費用が発生と推定する。日本リージャスはそれを上回る収益力があり、TKPとのシナジーも見込める。事業展開では、貸会議室からレンタルオフィス、コワーキングスペースへ、空間再生のドメインが大きく広がることになろう。

・TKPは、時間貸し(会議室)から月貸し(オフィス)へ事業の枠を広げようとしていた。この局面でリージャスの案件が飛び込んできた。すぐに動いて、IWG(リージャスのホールディングカンパニー)の創業者でCEOのマーク・ディクソン氏と意気投合し、一気に買収を決めた。ディクソン氏は、TKPの取締役にも就任する予定なので、今後の連携は深いものとなろう。

スイスに本社のあるIWG傘下のリージャス(Regus)は、レンタルオフィスで世界№1のブランドを有し、世界110カ国、1100都市に3300拠点を有し、ロンドン証券取引所に上場している。このディールの発表後、IWGの株価は275ポンドから334ポンドへ21.5%ほど値上がりし、時価総額は30億ポンド(4350億円)となった。

・TKPは、日本リージャスの買収で、1)既存拠点の獲得と同時に、2)IWGと日本国内の長期パートナーシップを結び、IWG各ブランドの独占的運営権を得ることができた。貸会議室とレンタルオフィスは互いに補完関係にあり、事業の親和性が高い。具体的なシナジーとしては、①共同出店、②TKP既存施設のレンタルオフィスへの転換、③両社のリソースの融合による顧客サービスの向上が見込める。

 ・IWGのCEOマーク・ディクソン氏(英国人)は創業者で、TKPの河野社長と波長が合った。IWGは、Regusを直営によるグローバル展開からFC(フランチャイズ)方式を活かした地域密着型、スピード重視のビジネスモデルを変えようとしていた。その第1号として、日本のマスターフランチャイジーにTKPが選ばれた。

 TKPの取締役に、IWGのM.ディクソンCEOに入ってもらう予定である。日本リージャスの西岡氏もTKPの取締役となって、社長を継続する。社員200人もそのまま移ってくる。

・IWGのM.ディクソン氏はなぜTKPを選んだか。日本マーケットでスピードを上げてビジネスを拡大するには、1)ダイナミックなリーダーシップをもった経営者がよい、2)日本で強力なプラットフォームを持っている企業がよい、3)シナジーの出る会社がよい、という理由でTKPに決まった。

・日本リージャスの西岡社長は、1)TKPの河野氏を良く知っていた、2)似た業界だが競合ではなく補完できると感じていた、3)現場では既に客を紹介し合うことがおきていた、4)一緒になることで、メニューが多様化できビジネス拡大がスピードアップする、ということで、TKPグループに入る事に何のためらいもなかった。

リージャスのブランドは、①無人のレンタルオフィス(Openoffice)、②サポート付レンタルオフィスのリージャス(Regus)、③コワーキングスペースのスペーシーズ(SPACES)などのグレードで展開されている。これから首都圏で新しいオフィスビルが次々と完成してくる。

・そうすると、従来のオフィスから移動する会社が続々と出てくる。空きスペースが出てくる。そこを活用する余地は大きくなろう。地方中核都市でも商業施設が空いてくる。金融機関の店舗も空いてくる。働き方改革が進む中で、働く場所の自由度は高まってくる。働く人々の転職も拡大してくる。独立して働く人々も増えてくる。よって、多様な機会が広がってこよう。

 TKPの施設は250拠点(37.5万㎡)、日本リージャスの施設は150拠点(9.5万㎡)で、合計すると400拠点(47万㎡)となる。これをこれから10年で1500拠点に拡大しようとしている。

・TKPはRegusのマスターフランチャイジーなので、日本において自前で直営の拠点を拡大してもよいし、立地によってはFC(フランチャイズ)展開を行ってもよい。東京では、新築のビルが1500万坪できてくる。TKPが有する貸しスペースはまだ12万坪である。その拡大余地は極めて大きいといえよう。

・また、日本のTKPのユーザー、リージャスの会員が世界にでると、世界のリージャスの施設が使えるように工夫することも可能となろう。逆に、海外のリージャスの会員が日本に来た時には、日本の施設を使えるようにしていく。互いのプラットフォームを利用し合うことが出来るわけだ。

 ・競合はどうか。米国のウィーワークは2008年創業で、2017年7月にソフトバンクグループと合弁で、WeWork Japanを設立した。ウィーワークは世界31カ国、97都市に554拠点、40万人をこえる会員に対してコワーキングペースを展開している。シェアードオフィス、ワークスペースを共同で利用する仕組みを提供する。

・レンタルオフィスという範疇でみると、ウィーワークとリージャスは高単価のコワーキングスペースの提供であるのに対して、TKPは別のセグメントも狙える。貸会議室とのシェアリングで、成長企業にフレキシブルなスペースを中価格帯で提供する。ニーズのあるボリュームゾーンを狙うという考えである。

・TKPは日本で12万坪、日本リージャス3万坪のシェアリングスペースを有している。一方、ウィーワーク(WeWork)は、ニューヨークに本社をおき、9万坪のコワーキングのスペースを有している。

・ウィーワークはオフィスの執務室のシェアリングであるが、TKPはオフィスの共有スペースのシェアリングを中心に100人が使えるような会議室をシェアリングしている。さらに、バンケットや商業イベントのスペースのシェアリングへハイブリッドの活用を展開している。

・スペースユーティリティのカギは、量と価格のバランスを図ることである。ここで、12万坪を増やして収入の拡大を図るのか、12万坪の高付加価値化を目指すのかという課題に対しては、両面作戦ながら、基本は高付加価値化を目指す。十分対抗でき、競争優位が確保できよう。

 

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