株式相場の行方~確実でないことを問う
2015.02.22 (日) 6:40 PM
・日経平均が18000円台に乗せてきた。今年は2万円にいくだろうという声も強まっている。こういう場面をどうみておくのか。いつの時代も先のことはわからない。ところが先を見通して、当てる専門家もいる。エコノミストやストラテジストは、経済の先行きや株式市場の展望について自信持って語り、明快に将来を予測する。では、それが当たるかというと、そうでもない。そもそも予測というのは、簡単にはその通りにならない。
・投資をする時には、自信を持ちたい、必ず成果が出ると確信したい、と誰でも考える。自分なりに頭の整理をしたいが、経済やマーケットは複雑で整合性が取れないことも多い。そんな時に、エコノミストやストラテジストの意見を聞きたくなる。
・専門家の意見を聞いて、どう反応するか。いくつかのパターンがありうる。1)Aストラテジストは、株式相場は夏までに2万円になるといったが、それが外れた。2)Bエコノミストは、為替は140円/ドルになると予想したが、その理由がよく理解できなかった、3)Cアナリストは、金融株が上がるというので買ってみたら、その通り儲かったのですぐに売った、という例を考えてみる。
・第1の例は、専門家の意見を当った、外れたで評価する投資家である。この投資家は予測の結果を重視しており、なぜそうなるかについてはさほど気にしていない。第2の例は、予測の結果も大事であるが、なぜそうなるかのプロセスを納得したいと思っている。しかし、その論理が投資家には十分伝わっておらず、理解されていない。第3の例は、結果やプロセスを問う前にとりあえず行動を起こしている。一定の信頼できる専門家の判断なのだから、何よりもアクションをとることが大事であると考えている。
・こういう場面で重要なことは、会社説明会で社長の話を聞く時と同じように評価してみることである。投資に値するいい会社であるかどうかは、①その会社の話を何度か聞いてみる、②別の会社の話も聞いて比較してみることである。同じようにエコノミスト、ストラテジストについても、同じ人の話を何度も聞いてみる、別の人の話と比較してみることがポイントである。そうすると、どんなロジックで予測を作っているのかがよく分かってくる。それが腹に入ってその後のプロセスをみていけば、単に当ったか外れたかということではなく、中身(コンテンツ)について自分なりにフォーカスすることができる。
・エコノミストやストラテジストの予測の成否については、さほど気にしないことである。なぜ、その専門家はそのような予測に至ったのかのプロセスとキーとなる要因について、しっかり押さえておく必要があろう。そこが納得できないと、自信を持って自分なりの投資決定をしてアクションがとれない。このプロセスを抜きにして売買の行動をとると、それがうまい成果に結び付いたとしても、次に失敗すれば挫折感だけが残ってしまう。
・世の中では、3つのことが起こりうる。1つは自分が想定していたようにいい方向にいくことである。予想以上にいい方向にいくことには何ら問題がない。2つ目は、想定していた通り悪い方向にいくことである。何が悪い方向かは分かっていた。それがどんな事態になるかもある程度想定できた。それが起きる可能性、つまり確率についても検討したという場合である。この時には、悪い方向に向かったという点では好ましくないが、投資家にとってサプライズはない。想定の範囲内といえる。
・3つ目は、そんなことが起きるとは想定もしていなかったという場合である。ここが一番難しい。起きる可能性はありうるが、その可能性は極めて低いかもしれない。しかし、一旦有事になれば深刻な影響をもたらすことになる。この不確実性の高い事象については、最悪の事態を想定し、悪影響を最小にする方策をイメージして、手を打つ必要がある。
・投資の世界では、リスクオン、リスクオフという言葉が使われ、二進法的に投資にポジティブな局面、ネガティブな局面という区分けがされる。1(イチ)、0(ゼロ)で明確に区分できるわけではないが、分かり易いので使われる。しかし、一番大切なのは、1から0に変わる時、あるいは0から1に変わる時をどう見抜くかであり、もう1つは、1でも0でもあわてないように、投資ポートフォリオを想定して組んでおくことである。
・ユーロ圏では、ドイツとギリシアの戦いが続く。ギリシアは緊縮財政には耐えられないという。ドイツでは、なぜ自助努力をしないギリシアを助けるのかという。でも、ユーロ統合で最も恩恵を受けているのはドイツではないか。いや、ドイツは民営化など相当の自助努力をしてきた。という中で、どのように折り合いをつけるか。ギリシアの苦境はすでに分かっておるので、リスキーな状況であっても、不確実な事態というわけではない。
・ウクライナにおけるEUとロシアの戦いも続く。原油の急落でロシアは苦しいが、外貨準備は十分なので、すぐに問題が起きるわけではない。軍事停戦が機能するとしても、ロシアの安全保障上の論理はEUにとっては受け入れがたいものがある。そのロシアを中国がエネルギー購入で助けるということもありうる。ウクライナへはEUが支援するので、民族対立は小康状態を保つとしても鍔迫り合いとなろう。予断は許さないが、不確実というわけではない。
・原油価格が急落した。このメリットは消費国である米国、日本、中国に大きく出てくる。産油国の収入は減るが、国がデフォルトするような状況ではない。しかし、紛争をかかえるロシアやナイジェリアには課題である。原油価格はシェール革命でオイルやガスの生産が増え、需給が緩んできた。そこに供給側の調整がなされなければ、価格は需給が均衡するところまで下がる。実際には一旦下がりすぎた後、適正水準に戻っていこう。今はその局面なので、原油価格の動きもリスク要因ではあるが不確実とはいえない。
・中国では内部的な権力闘争は続こうが、習体制が強化される方向にある。過剰投資の影響で成長率は減速しようが、十分コントロールされた中でのマイルドな減速となろう。ここもリスク要因ではあるが、不確実な状況ではない。
・米国では原油価格の急落が、ガソリン価格の下落を通して車社会の消費者にはプラスに働く。一方で、シェールガスやオイルの生産者にはマイナスである。米国FRBの利上げについても、マーケットにネガティブの影響を与えないように、緩やかに実施されるであろう。今夏から秋にかけて実施されるという見方である。これも状況は分かっていることなので、リスク要因ではあるが不確実というわけではない。
・日本では、第3の矢の成長戦略が遅れているといわれる。構造改革のための規制緩和、規制の見直しには時間がかかる。TPPの妥決とJA改革は進みつつある。国内の景気もよくなりつつある。消費税のマイナスの影響はこの4月以降薄れてくる。円安の効果で輸出企業の業績は拡大し、輸入企業のコストアップに対抗した価格転嫁も少しずつ進展しつつある。円安の中で輸出企業は数量効果でなく価格効果で利益を上げてきたが、この水準からは輸出の数量も増えてこよう。原油安がエネルギーコスト安として、企業にも家計にも大幅なプラス効果をもたらす。企業業績は2015年度も+10~15%の増益が見込める。これを織り込んでいくと、日経平均での2万円超えも順当なところであろう。
・不確実な要因は何か。天変地異やイスラムテロ国家(IS)との戦いなど、想定外のことが起きるかもしれない。リスク要因はこれまで挙げたようにいくつもあるが、これがネガティブな方向に動いた時にマーケットも一旦下げよう。よって、日経平均でいえば、18000円台のゾーンから局面によって16000円台に下げることもあろう。しかし、大勢としては、その後2万円を目指して戻っていくことになろう。
・次は日経平均3万円に向けて、日本の構造改革の進展と企業の稼ぐ力の向上が問われる。日経平均3万円は予測するものではなく、それを実現するために各々の立場で‘やるべきことをやる’という、まさに実行力にかかっている。投資家はそれを見ている。