夢に投資する
2024.12.27 (金) 8:48 AM
・最近2つの会社の話を視聴した。おもしろい。将来が楽しみであるが、当面の業績には期待できない。大赤字である。こういう企業にいかに投資するか。
・3つの考え方があろう。第1は、よくわからない会社には投資しない。自分が納得できるようになってからで遅くない。大赤字で業績の先が読めないとれば、やめておいた方がよい。
・第2は、CEOの話を聞いて、わからないのは自分である。しかし、世の中には、その会社の特性を専門的にわかる人がいる。そういう人が投資家、株主として勝負している。専門家からみて信頼できる企業かどうかを判断してもらえれば、投資してもよい。
・第3は、会社の将来はわからないが、やろうとしていることに夢があって、自分にとっても身近である。つまり、大きな関心があり、継続的にフォローしたいくらいの強い願望がある。うまくいかないことは覚悟の上であるが、自分なりに納得するので、その企業の夢に乗ってみたいという投資である。
・1社目は、2024年7月に東証グロース市場に上場したハートシード(Heartseed、コード219A)である。重度の心不全におちいった心臓を再生医療で蘇らせようという、心臓血管のバイオベンチャーである。
・2024年5月に、筆者は心筋梗塞で緊急入院した。2度のカテーテル治療で幸運にもサバイブした。血管が詰まって、血液が流れにくくなった。放置しておくと、その周辺が壊死してしまい、ついには心臓が止まってしまう。早朝カテーテル手術をしてくれた医師は、6時間以内がカギで、3割の人が亡くなってしまうと話してくれた。
・カテーテル手術中に、ふっと意識を失った。目が開くと、先生が心臓マッサージをしていた。後日、先生から「あのまま気を失って、それがずっとさめない、それが死です。」という説明を受けた。一種の臨死体験であった。最近、友人も心不全で亡くなっている。
・心不全におちいっている心臓の筋肉(心筋)を、IPS細胞を利用して再生させようという治療が、ハートシードのコア事業である。再生心筋で、心筋を補填しようという治療法(リマスキュラリゼーション)である。
・IPS細胞として拍動している心筋球を、本人の心筋壁へ直接移植していく。この心筋補填療法(Remuscularization)は、従来の治療とは違って、画期的な効能を有する。従来は、1)薬で心負担を減らすが、重症患者には有効性が低い、2)心臓移植は普及が困難、3)従来の細胞シート治療は心筋細胞が分化しないので、投与細胞は数か月で消失してしまう。
・世界で初めて、移植心筋の生着が確認されており、治験が進んでいる。ハートシードは、ノボノルディクスと契約して全世界への展開を目指しており、マイルストーンごとの収入も見込める。心筋再生補填療法では、世界をリードしている。まだ時間はかかろうが、夢は大きく、筆者にとっては身近な夢である。
・もう1社は、2023年4月に東証グロース市場に上場したアイスペース(ispace,コード9348)である。まさに宇宙をビジネスにしようとしている。まずは、日本初の民間月面探査をミッションとして活動している。
・筆者は、宇宙に対して多大な関心をもっており、宇宙の成り立ち、行く末に関する書籍を趣味として多読している。宇宙人はいるのか、宇宙の起源は本当にインフレーションにあるのか、宇宙の膨張はどこまで続くのか。
・アインシュタインの相対性理論を超えるマルチバースはありうるのか、目に見えないダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)はどのように解明されるのか、など話は尽きない。
・ispaceは、2024年4月に月面への着陸を目指したが、そのミッションはうまくいかなかった。着陸地点の崖をうまく認識できなかったようだ。そこでミッション2では、もう一度着陸を目指し、次に月面の探索を図る。
・まず月へ無人で行く。重要なのはランダー(着陸船)とローバー(探査車)である。宇宙船を飛ばして、ランダーを着陸させ、そこからローバーが動いて、月面を探索する。このオペレーションがスムーズにできるようになれば、月への輸送サービスがビジネスとなりうる。
・1)輸送サービス、2)データサービス、3)パートナーサービスなどが立ち上がってこよう。お客の荷物を運ぶというペイロードがビジネスになろう。NASAのアルティメス(Artemis)
計画は、月を拠点に宇宙に羽ばたこうというものである。
・この計画には世界43カ国が参加している。宇宙で生活するために、まず月に拠点を作る。月には水があるので、これを活かして、H(水素)とO(酸素)を作る。燃料と酸素があれば、一定のエコシステムを創ることができる。そこで、まずは月に必要な物資を運ぶ必要があるというわけだ。
・ispaceはグローバルなビジネス展開を狙っている。すでに株式市場で340億円を調達し、融資も310億円を受けている。今後ともファイナンスが必要となろう。2040年代には月に1000人が居住し、年間1万人が月に旅行するようになる構想を描いている。
・月は誰のものか、宇宙条約は機能するのか、安全保障は大丈夫か、月でとれた資源はどのように利用できるのかなど、取り合いにならない仕組みが求められる。月を拠点に、次は火星を目指すなど、夢は広がっていく。
・ヒトの再生ビジネスとユニバース(宇宙)ビジネス、どちらもリスクは高いが、夢がある。ミクロ決死隊と宇宙大冒険、ここに投資して、膨らむ夢を楽しみたいものである。