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会社が変わるには

   2024.01.19 (金) 10:00 AM

・昨年11月、日経の世界経営者会議に参加した。毎年経営者の話を聞いているが、投資の参考になることが多い。いくつかを取り上げてみたい。

 ・モルガンスタンレーのJ・ゴーマンCEO(当時)は、2014年にCEOとなり、10年を経て、2023年末に退任した。オーストラリア出身の弁護士で、マッキンゼー、メリルリンチで働き、2006年にモルガンスタンレーに入り、2008年のリーマンショックに直面した。

 ・この時、三菱UFJ銀行から90億ドルの出資を受け、危機を乗り切った。以来、三菱UFJ銀行とは良好な関係を築いてきた。

 CEOとして10年、ビジネスモデルを大きく変革し、時価総額でGS(ゴールドマンサックス)を上回っている。IB(インベストメントバンキング)とトレーディングでは、変動リスクが大きいということで、ウェルスマネジメント分野の拡大を図った。

 ・富裕層向けAM(アセットマネジメント)は、船の底荷のようなもので、経営に安定をもたらすが、船が重くなるのでスピードは出ない。全体として、スピードと安定のバランスを図った。

 ・変革には、トップがリーダーシップを発揮し、企業文化を育てることが求められる。ウォール街でトップに立つ資質として、1)自らに足らないところはチームで、2)自信と信念を持って人がついてくるように、3)しぶとくやり抜くレジリエンスを発揮し、4)精神的、身体的に安定を保ち、5)戦略をしっかり立て、よいコミュニケーターであること、が必須であると語った。

 ・自らの後継者(サクセッサー)は、3人中からえらばれた。米国企業では珍しく、トップ争いに外れた2名も会社に残って、新しいCEOを支えることになった。

 ・三菱UFJ銀行とのアライアンスは、上手くいっている。三菱UFJサイドの歴代のトップ4名とは十分なコミュニケーションをとっており、半年ごとの運営委員会で議論を続けてきた。

 ・ゴーマン会長の見立てによると、1)米国経済はソフトランディングできる。2)米中のデカップリングは一時的で、相互依存の中で人々は生きている。3)しかし、ロシア、イスラエル、中南米は複雑で、不安がつきまとう。4)日本は30年ほど苦境に立ってきたが、よい方向にある。その中で、人口を増やすには、①子どもを増やすか、②移民を入れることである。これができるか、と指摘した。

 ・シュナイダーエレクトリックのP.J.トリコア会長は、デジタルとエネルギーを軸に、サステナビリティ経営を実践してきた。まず、サステナビリティを経営の根幹に置いた。戦略とサステナビリティを統一して、それを文化にするまで実行した。グローバルコンパクトを共通語として、すべてのエコシステムを創ってきた。

 ・世界200の工場、100のディストリビュータセンターで、デジタル化を進めた。まずは適切なパートナーを選んだ。自ら開発するのではなく、今あるシステムを使った。IoTに今ある装置を使い、クラウド化した。すべてのものを繋ぐ。その上で、データをとる。データには意味付をしておく。このリファレンスで、アセットとしての価値が出てくる。すべてをオープンにしてつないでいった。

 ・これによって、IoT領域で、最もインパクトのある企業の1社となった。GXDXを実践している。アジアと中心に市場を広げている。サステナブル経営で企業価値の向上を図っている代表企業として注目できる。

 ・企業を変革する人材はどう育つか。会社が変わるには、人が変わり、組織が変わり、企業文化にまで及ぶ必要がある。エグゼクティブからミドルまで、そのマネジメント人材は、教育で変わるのか。一定の基礎を学ぶ必要はある。それを実践して、体験を積んでいく必要もある。自らの創意工夫も求められる。

 ・スキルはトレーニングできる。ソリューションはコンサルから出てくるかもしれない。インセンティブシステムは、やる気を引き出すことにつながる。目標達成に向けて、自らをどう変えていくのか。従来の自分のままでは、悩みは尽きない。抵抗感をかかえたままでは、行動変容までいかないことも多い。

 ・新しいアイデア、意味付けの見直し、従来とは違った気付きなど、自分を変えていくには、コーチについてコーチングを受けるとよい。経営者は壁に向かって話しているともいえる。エグゼクティブは本当に悩んでいることを、周りには話しにくい。オフタイムの飲み会でストレスを発散しているだけでは、次につながらない。

 ・経営層にコーチングが広まっている。2つの側面があろう。1つは、コーチングのノウハウをよく知ることによって、自分の言動に新しい規律をもたらすことができる。もう1つは、実際にコーチについてもらうことで、対話を通して、自分を発見し、納得していければ、その効果は大きい。

 ・コーチ・エイの鈴木社長は、コーチングによる組織改革をサービスとして提供している。米国の企業では7割の経営者が、エグゼクティブコーチングを取り入れているという。コーチとの対話を通して、自分をバージョンアップしていく。

 ・会社のさまざまなレベルでコーチングが実施されると、組織風土が一気に変わると強調する。それならばやってみる価値はあろう。筆者も会社勤めの頃、コーチングの研修に参加して、大いに触発された。

 ・このコーチングのノウハウをAI化したAIコーチングも始まっている。コストが大幅に安くなるので、1万人の社員に1度に導入できるという。AIコーチングで、毎日会話していくと、人の意識は変わってくる。中長期の視点も育ってくるいう。こうなればおもしろい。

 ・企業を変えるのは、①リーダーである、②ガバナンス(社外)である、③組織である、④社員のインセンティブと教育であるなど、さまざまな視点がありうる。その中で、共有、共感を通して、11人がレベルアップするにはコーチングも有効であろう。

 ・実は、投資家と企業との対話も、双方にとってのコーチングという側面があろう。緊張感のある対話を通して、情報のフィードバックを活かし、互いの行動変容に結び付けていく。信頼感が醸成され、企業価値の向上が図れれば、その効果はwinwinである。企業変革の要は何か。これを経営者と議論して、それを実践する会社に投資したい。

 

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