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ウェルビーイングを投資に活かす

   2024.12.08 (日) 10:36 AM

・Well-beingとは、人生における幸福感、健康や生活における善さを意味する。幸福度や満足度は主観的で、人によって異なる。国全体でみれば、GDPでは測れない質的な生活満足度がどうなっているかを知りたい。

・一般に生活満足度は経済的な状況に依存しようが、それぞれの幸不幸は経済状況だけでは測れない。生活の質に対する人々の反応を知りたいが、それを何らかの形で客観化することはかなり難しい。

・内閣府は、生活の質に関する満足度調査を行っている。それをみると男性より女性の方が高い。60歳以上では、働いている人の方が、働いていない人より満足度は高く、その差は男性の方が大きい。

・どのような指標でみていくのか。主観的な指標として、11の分野をとりあげている。①家計と資産、②雇用環境と賃金、③住宅、④仕事と生活、⑤健康状態、⑥自然環境、⑦自身の教育水準と教育環境、⑧社会とのつながり、⑨身の回りの安全、⑩子育てのしやすさ、⑪介護のしやすさ/されやすさ、の11項目である。

・これらの主観的項目に対して、客観的指標も結び付けようとしている。可処分所得、金融資産、生涯賃金、失業率、有効求人倍率、正規/不本意非正規雇用、所定内賃金や最適賃金などが入ってくる。

・こうした生活満足度をいかに上げるか。質的なよさを幸福感としていかにとらえるか。それがWell-beingとして注目され、政府の政策や企業のESG活動にも組み込まれつつある。Beyond GDP、Beyond生産性として、経済的価値、財務的価値を越えて、質的よさの価値を評価指標に掲げている。

・SDGsは2030年に向けた国連の活動であり、日本でもその活動が推進されている。日本の企業では、SDGsを自社のサステナビリティ活動を検討する時のフレームワークに用いている企業が多い。ESGをいかに社会的価値と結び付けていくかという視点でみると、SDGsは役に立つ。一方で、経済的価値も重要なので、ここから離れていくわけにはいかない。

・では、国連のSDGs活動は進展しているのか。2030年までの15カ年計画において、2023年の折り返し時点で、その達成度は目標の15%程度である。コロナ禍、戦争、気候変動によって、進捗は思うようでない。

・2000年に始まったMDGsでは人間のウェルビーイング、2015にスタートしたSDGsではヒトと地球のウェルビーイングを目指しているのに対して、その次のウェルビーイングはどうなるのか。慶大の蟹江教授は、ヒトと地球に宇宙も加えたウェルビーイングになるのではないかと話した。(2024年10月日経well-beingシンポジウムにて)

・Beyond SDGsでは、2030年から始まる15年のテーマが論点となる。戦争、紛争に対して、国連の機能は十分役立っていない。先進国、発展途上国、後進国という分け方も適切とはいえないが、地域、国状、文化によって、価値も多様であり、欧州の建前だけでは理解を得られないことも多い。

・紛争がなければ、どの国も発展する。社会体制が安定していれば、経済活動は活発化する。政治体制が私利私欲によってワンマン化されなければ、社会の秩序は健全化しよう。賄賂経済が抑制されて、犯罪が撲滅されれば、健康を支えるインフラも整備できよう。

・地球では、これができない。うっかりすると、宇宙開発でも領土の取り合いになりかねない。地球人による宇宙戦争が勃発するようでは話にならない。

・ウェルビーイングのバリューチェーンは、1人ひとりの個人から、地球、宇宙にまで結びつくように広がっている。しかし、そんなことは自分に関係ない。はるか遠い世界の話であると、なってしまいがちである。

・個人、企業人、組織人、国民、地球人、宇宙人の一人として、行ったり来たりしながら、思考実験を繰り返したい。すぐに解はないかもしれないが、思考の広がりの中で、小さな実践を試行したい。

・beyond SDGsは、次なるWell-beingにつながる。京大の内田由起子教授(人と社会の未来研究室)は、「場」を強調した。まずは生きていたいというアフリカの人々の声がウェルビーイングのスタート台である。次に、よりよく生きるには、将来への希望が持てることである。

・「あなたが生きてくれることが、社会にとって幸せ、私にとって幸せである」という考えのもと、そのような場をいかに創り広げていくか。ウェルビーイングとは、楽をすることではなく、そのような場を創ることである、という主張に感銘を受けた。

・いまウェルビーイングかどうか、心が幸せかどうかは、笑顔に出るという。ならば、笑顔を広げていこう。この笑顔を画像認識して、ウェルビーイングのKPIにしたらどうか、というアイデアは確かにおもしろい。

・企業においては、経済的な生産性が上がっているかという指標と同時に、働き甲斐の場が形成されているか。その場のウェルビーイングが質的に高まっているか、という点に注目したい。

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