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理事長と学長~組織の活性化に向けて

   2023.04.23 (日) 4:52 PM

・昨年「クラブ・ウィルビー」(代表 残間里江子氏)のアカデミーで、興味深い講演を聞いた。普段全く縁がない世界であるが、作家の林真理子氏と美術アーティストの日比野克彦氏はどんな活動をしているのか。

・林氏は昨年7月に日大理事長の就任し、日大の再生に取り組んでいる。作家に大学組織の長が務まるのか。そんな問いは愚問のようだ。

・毎日、日大に行って改革を実行に移している。週に1回はランチ会を開いて話を聞いている。常務理事に納得できる人に入ってもらい、これまで疎まれてとばされていた人達を幹部に据えた。オリックスの宮内氏からは、ガバナンスの組織化、改革の実行を楽しめ、と励まされたという。病院の建て替えなど、大きなテーマも続々とある。

・今まで260冊の本を出版した。3分2は小説であるという。今でも連載は多いが、理事長になって減らしている。大学をこうしたいという思いはしっかり持っており、40年の作家活動が大いに役立つと強調した。編集者はプロデューサーであり、作家は心をこめて新しい世界を創っていく。

・林氏は、若いころ就職先がなくてバイトをしていた。コピーライターにトライして、糸井氏の声をかけてもらった。しかし、向いていないということで、企業の宣伝部に移った。根拠のない野心はあったので、本を書いた。そこがスタートであった。

・小説家は一人で綴っていく。TVに出たりしていると本は書けない。歴史小説に進出して、資料も読むようになった。これも嫌ではなかった。様々な人々に話を聞くことも多い。出会いの中で新しいテーマに挑んでいった。

・学生には、「良いことも悪いことも、人生突然やってくる」ので、楽しいことを考えて、面白そうなことにチャレンジしていこう、と話している。それには体力と気力がカギなので、これを保って母親のように100歳まで頑張りたいと語った。

・日比野克彦氏は、2023年4月より芸大の学長に就任した。若い時から段ボールを使って作品を創った。当時その作品を観て、よくわからないけど新しい世界なのか、と感じたことを覚えている。日本サッカー協会の社会貢献委員長も務めている。

・1982年に日本グラフィック展大賞を受賞したが、80年代から渋谷で、広告、創作、文化とのつながりを発信してきた。デザインをアートへ、がテーマであった。1982年にサッカーのワールドカップがスペインであったが、スポーツとビジネスをつなげる形でFIFAがスタートした。サッカーへの思いを作品にして、デザインとアートを追求した。

・グラフィックは平面か立体かという問いに対して、段ボールを活用した。グランドピアノを原寸大で作成して、ボックスアートを展開した。クレーンを使って、とんでもなく大きい絵を描いたこともある。

・ヒビノホスピタルは、もう79回目を迎えた。よりよく生きるには、文化芸術が必要である。展覧会で人々に会うと会話が弾む。そこで、話すことを目的にヒビノホスピタルを始めた。リレーショナルアートとして、ビニール傘の裏に絵を描くことなどもやっている。

・2000年からは「明後日朝顔プロジェクト」を実施している。廃校になった校舎を利用してアサガオを育てる。今、全国29の地域に広がっているという。このアートプロジェクトのカギは種(たね)にある。種は記憶をもっている。年一回、全国会議を開いている。「明後日朝顔新聞」を自分たちで作って、アーカイブに利用している。

・アートで町おこし、地域おこしをしていく。中身は何でもよい。文化として新しい祭りを創っていくことが重要である。アートで何かを競っていくのもよい。サッカーは文化であり、世界中で人が集まってくる。ワールドピープルカップも新しい試みである。

・SDGsの17項目、169のターゲットの中身に、アートは1つも出てこないという。これは確かに驚きである。人の心を動かすには、アートの効能が不可欠である。行動変容にはアートが必要である。それならSDGsにアートを入れよう、そのために芸大は活動しよう、と強調した。

・学長の任期は6年、二足の草鞋(わらじ)ではない。作品作りは変わらない。アートをさまざまな人々と、様々な地域で作り上げることをずっとやってきた。これまでやってきたことを芸大プロジェクトとして広げていく方針である。

・国立大学の学長が集まると、圧倒的に理系の学長が多い。国の政策も理系人材の育成にある。論理のサイエンスに対して、心の芸術はもう一方の軸である。ノーベル賞の野依先生は、人には両輪が大切であると励ましてくれたという。

・アートは分からないものを引き付けていく。アートは関係性を作っていく。気持ちを共有できる鑑賞者が励ましになる。アーティストは褒められると育つ。鑑賞者もアートに出会って、気持ちが明るくなろう。互いに孤独ではなく、共創の場が生活の張を生む。

・こうした文化的活動に価値がある。価値を創造しているというエビデンスを、学長として示していきたいと宣言する。プライスレスではなく、価値を測れるようにして、アートのよさをアピールしていくと語った。

・お二人とも、現実の社会としっかり結び付いて、新しい挑戦をしている。芸術、文化という社会的活動と、それが活きる価値を認識して、経済的価値の実効性にまで結びつけていこうという姿勢に感銘を受けた。企業の社会的価値に芸術をもう一歩織り込んでほしいと願う。

 

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