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Jリートとインフラファンド~ポートフォリオへの活かし方

   2021.06.21 (月) 10:55 AM

・5月に日経Jリートセミナーに参加した。改めてJリートやインフラファンドは、今どのような局面にあるのかについて検討してみたい。

・東証によると、4月末時点で東証1部の上場数は2191社、時価総額は702.4兆円であった。2部は474社、5.8兆円、JASDAQは702社、10.6兆円、東証マザーズ358社、9.6兆円であった。これらの市場区分の行方が注目を集めている。

・これとは別に、東証Jリート市場がある。上場数61社、時価総額16.8兆円と、2部とジャスダックを足した規模の時価総額を有する。

・Jリートは不動産投資法人である。不動産賃貸業に特化した不動産会社である。投資してそこの株主になるのであるから、賃貸不動産の小口オーナーになるともいえる。どの不動産に投資するかは運用会社に任せる。賃貸不動産を購入し、そこから得られる賃料や売却益を投資家に分配する。

・Jリートには、不動産のタイプとその組み合わせで、いろいろな種類がある。1つのタイプに特化したものが特化型リートで、①オフィス(ビル)、②住居(マンション)、③商業施設(ショッピングセンター)、④物流(倉庫)、⑤ホテル(宿泊、リゾート)、⑥ヘルスケア(シニア向け住宅)などがある。

・いずれも不動産の賃貸料をもらうのであるが、それを利用する顧客特性によって、リスクが変動する。とりわけコロナ禍の前と後では経営環境が激変しており、ホテルが最も大きな影響を受けた。

・住居(レジデンス)が最も安定していそうであるが、これも誰が住んでいるかによって影響される。オフィスも安定していそうだが、不況が長引くとオフィスの見直しを迫られる企業が増えてくる。物流ではEC(インターネット通販)が急拡大しているので、ここに関連した市場は拡大している。

・来年春までにはワクチンの接種が進み、集団免疫が得られてくる。それにつれて、ポストコロナのビジネス活動が活発化してこよう。マーケットはそれを先取りして動いているが、どのような展開になるのか。

・1つのタイプ(特化型)ではなく、いくつかのタイプを組み込んだ複合型リートや全体をまとめた総合型リートもポートフォリオに多様性をもたらす。テーマ型か安定型かという観点ともみられる。

・全Jリート61本を分けてみると、1)特化型31本、(オフィス8、住居5、商業3、物流9、ホテル5、ヘルスケア1)、2)複合/総合型30本(複合11、総合19)である。複合には、オフィス+住居、オフィス+ホテル、オフィス+商業などがあり、複合には、オフィス+住居+商業+ホテルなど、これもいろいろ組み合わせている。

・ポートフォリオであるから、どのタイプの不動産か、その不動産は個別にどんなものか、立地、築年数、入居率、入居者、入居年数などをよくみていく必要がある。ポートフォリオ構築の巧拙がパフォーマンスに影響してくる。

・過去のトラックレコードをよくみておくと共に、1)不動産売買市場のリスク、2)不動産賃貸市場のリスク、3)自然災害や環境リスクなどにも注意しておく必要がある。

・Jリートの平均分配金利回りは、過去20年でみると1~7%で変動しており、中心ゾーンは3~5%である。4月末の利回りは3.46%であった。この利回りのよさが注目されて、一定の人気を保っている。短期の変動にとられずに、中長期の安定リターンを求める投資家には大いに向いているといえよう。

・Jリートの質をみる上では、ESGへの取り組みが問われており、投資法人も開示を積極化している。利益相反を招かないようなガバナンス(G)は十分か。環境(E)に配慮した施設運営を行っているか。地域社会や働き方といった社会(S)とのつながりにおいて、バリューチェーンは健全か。こうした点を担保する認証(外部評価)を得ているかも重視されている。

・加えて、JリートのETF(上場投資信託)も、東証リート指数連動、東証リートコア指数運動、日経ESGリート指数連動、野村高利回りJリート指数連動などいろいろある。また、日銀は2010年以降Jリートの買い入れを継続的に行っている。

・同じ投資法人の仕組みで、インフラ資産に投資するファドがインフラファンドである。市場はまだ1600億円と小さいが、この5年で大きく育ってきた。現在上場している7銘柄はすべて太陽光発電設備に投資している。

・太陽光はこの10年再生エネルギー発電の雄として注目され、国の支援もあって順調に拡大した。投資法人は太陽光発電の設備インフラを所有する。それをオペレーターに賃貸して賃料を得る。オペレーターが運用した電力は、電力会社に売電される。この時の価格はFIT(固定価格買取)制度に基づく。

・FITは太陽光で発電した電力を20年間同じ価格で買い取る仕組みである。発電設備が高く小規模である時、民間企業が通常の経済動機で事業を立ち上げようとしても、採算が成り立たない。そこで政府が電力使用者に一部割高な電力を利用するように補助の仕組みを作った。

・その価格(FIT)は、規模の拡大とコスト低減をみながら、逐次下げられてきた。それでも20年間の価格が保証されていれば、しっかりした経営を行うことで、毎年一定の利益を出すことができる。これを投資家に分配金として支払っている。

・7社の分配金の利回りは、過去5~7%のゾーンにあり、直近は6%前後である。この分配金は、利益分配金+利益超過分配金から成り立っており、利益超過分配金は本業のリターンとは性格が異なるので、注意が必要である。

・インフラには、太陽光の他に、風力、地熱、バイオマスなどがある。発電以外でも、公共施設運営権、運輸インフラ、上下水道、通信施設など、いろいろありうる。再生エネルギーの拡大が望まれる中、インフラファンドが果たす社会的役割はさらに高まりそうである。

・Jリートはこの20年、インフラファンドはこの5年の上場商品である。リターン・リスクのプロファイル(特性)が株や債券とは異なるので、分散効果という点で、ポートフォリオの構成には大いに活用できる。

・安定した不動産賃貸ビジネス、環境にやさしい再生エネルギーへの投資で、リスクとリターンのバランスをさらに向上させたい。

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