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ESGをいかに投資に活かすか

   2021.04.19 (月) 1:53 PM

・ESGをいかに投資に活かすか。まず、いくつかの条件がある。第1に企業がESGに基づいたサステナビリティ経営を実践していないことには、ESGを投資の評価に用いることはできない。ESGが今ほど注目される前から、ESGの精神を創業者の思いと企業文化として実践してきた企業はいくつもある。

・この10年ESGに先進的に取り組んで、一定の成果を上げている企業も多い。現在、本格的に取り組んでおり、5~10年後に目に見える形で成果を上げてくる企業もあろう。その取り組みと変化のスピードを評価することになろう。

・第2は、ESGをベースにした中長期的な社会的価値の創造は、経済的価値とどのように結びついてくるのか。その考え方が明確になっていないと、みせかけだけのいいとこ取りになりかねない。つまり、社会的価値を追求するといいながら、目先の経済的価値を優先するかもしれません。

・第3は、ESG投資の価値評価をどのように行うのか。その方式に定番はなく、いまのところ多様である。この評価方法について、一定の見識をもって考え方を定めておかないと、投資判断が納得できるものとはならない。ひいては、投資パフォーマンスに寄与しているかどうかにも、自信を持てないことになる。

・Quick社による「2020年ESG投資実態調査(156社中54社が回答)」によると、1)ESG投資の手法では、ESGインテグレーションが最も多く、2)非財務情報を活かしてスコアをつけている、3)ESG専門チームによるスコアリングを活かしつつ、投資チームのアナリストが総合評価していることも多い。

・4)自社でレーティングしている運用機関が大半で、外部データは参考に用いている。5)ESGのエンゲージメントでは、E(環境)からS(社会)へ関心がシフトしており、ESGへのコミットメント、マテリアリティの特定や、KPIの設定が問われている。

・日経とQuick ESG研究所は、伊藤教授(一橋大学CFO教育研究センター長)のROESGのコンセプトを定量的に評価する方法を考案し、2020年度のROESGランキングを公表した。(2021年3月20日日経新聞)。

・その方法は、ROESG=ROE×ESGとして、ROEは直近3年間の平均を用いた。ESGスコアは、ESG評価機関(4社)の評点を10分位にして、上位10%から下位10%までを1.0点から0.1点きざみとし、4社の平均点を用いた。例えば、ROE 20%でESGスコア0.4ならROESGは0.2×0.4×1000=80ポイント、ROE 10%でESGスコア0.9ならROESGは90ポイントとなる。

・評点の方式には様々な議論があろう。資本効率の財務指標はROEの3年平均でよいのか。ESGのスコアは、ESG評価機関のデータをそのまま使ってよいのか。中長期的評価はどこまで入っているのか。所詮は現時点のデータにすぎないのではないか。それでも、企業間の違いを相対的にみる1つの方式として興味深い。

・京大ESG研究会のセミナーで、UBSアセットマネジメント(UBS AM)の松永氏(執行役員、運用本部長)の話を聴く機会があった。ESGをベースにしたサステナブル投資をどうみているか。

・結論として、松永氏は、社会的リターンと経済的リターンの収れんが実務ではみられると強調した。この10年間でサステナブル投資は大きく発展してきた。しかし、そのニーズは多様で、投資手法も様々である。

・それでもESGベースの株式投資はUBS AMの場合、アウトパフォームしているという。なぜか。ESGがしっかりしている会社は、脇が締まっており、リスクマネジメントに優れている。つまり、ネガティブなニュースが少ない。グリーンボンドもコロナ禍にあって下落耐性に優れているとみている。

・ESGをベースにしたサステナブル投資では、カーボンニュートラルが最大のテーマである。アプローチとしては、ネガティブを避けるリスク管理型、バランスをとるESG統合型、社会的リターンを重視するサスナブル投資、そして、社会的リターン中心のインパクト投資へと広がっている。

・リスク管理型のケースでは、例えば同じ投資スタイルは継続するものの、CO2はしっかり減らすポートフォリオに組み替えていく。統合型のアクティブ運用においては、どの企業にとってもCO2削減は大命題である。

・その場合、エネルギー、電力、鉱山などの企業において、トランジション(途中のプロセス)をどのように進めるか。ここも重要である。また、どの企業においても、DXがその推進においてカギを握ろう。

・UBS AMでは、1)サステナビリティを評価するスコアを自ら検討し、2)各企業の取り組み姿勢を確率モデルとしてモデル化し、3)それをベースに積極的にエンゲージメントしていく、という方式をとっている。サスティナブルスコアが高く、長期的バリューがまだ織り込まれていない企業群をベースにポートフォリオを作っていく。

・エマージング株については、メガトレンドを考慮したサステナブルリーダー戦略をとっている。メガトレンドとしては、DX、ヘルスケア、消費高度化、気候変動(エネルギー、スマートモビリティ、再エネ)、反グローバリズムと地政学などをみている。

・ESG投資においては、1)財務的には10年のP/L、B/S、C/Fをみていく。2)企業の定性評価では、① 業界構造(競争力)、② 収益性への結びつき、③ G(ガバナンス)を中心としたESGの開示を評価する。とりわけ、社内評価モデルの活用と、外部スコアも取り入れたリスク管理モデルを両面で使っている。

・筆者は、企業評価において、ESGインテグレーションをベースとしているが、とりわけ、1)経営者の経営力、2)企業の成長力(イノベーション)、3)業績のリスクマネジメント、4)ESGのサステナビリティ、の定性評価を重視する。

・それぞれをレーティングして全体をみる。その上で、バリューエーション(割安か割高かの判断)を行う。これを続けていると、投資の勘が磨かれてくるはずである。今後とも実践していきたい。

 

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