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長生きに発想の転換を~スコット教授に学ぶ

   2019.11.04 (月) 9:15 AM

・7月にCFA協会のフォーラムで、アンドリュー・スコット教授(ロンドン大学ビジネススクール)の話を聴いた。「Life Shift~100 年時代の人生戦略」というテーマであった。

・3年前に出版された「Life Shift」は日本でもよく読まれた。スコット教授の話をわがことのように見立ててみると、いろいろ面白いことが分かるので、いくつか取り上げてみたい。

・高齢化が進んでいる。自分も老人の域にあるが、そんな気はしない。健康で歳をとっているのはいいことなので、何も悲観することはない。では、歳を取ってきて、人生が楽しいか。ここは千差万別であろう。

・高齢者は相対的に若返っている。単に寿命が延びているだけではない。人生60年が80年になり、今後100年になろうとしている。自分の祖父母の寿命をみて、人生を考える必要はない。私の場合、祖父も父も70代で亡くなったが、祖母、母は90代半ばまで生きた。

・長生きは当たり前になってくる。その時のベストプラクティスは何か、とスコット教授は問う。歳を取っても若くいるには、今の社会の規範や仕組みが遅れており、解離が生じていると指摘する。

・人々は歳の割に若くなっていると考えた方がよい。世の中をみると、独身が増え、結婚が遅くなり、子供を持つのが遅くなり、キャリアを長く続ける方が経済的に有利となっている。2007年に生まれた日本人の半分は、107歳まで生きるようになると予想される。これがいずれ世界で起きてくる。

・今までよりも時間が豊富にある。これをどう使うか、どこに使うか。この使い方を全面的に見直す必要がある。20世紀に、ティーンエイジ、ミドルエイジ、引退、年金、という概念や制度が生まれた。これがもう古くなっている、とスコット教授は強調する。

・21世紀に生まれた人は、1)20歳前半までが準備ではなく、35歳までが準備期間となる。2)35歳から45年間、つまり80歳まで働く。3)そして、これまでよりも10~20年長く、100歳まで生きる、とイメージすべきであると話した。

・私の子供でいえば、学校を出た後、社会で10年くらい揉まれる期間も、人生の準備期間とみておけばよい。しかし、社会がそれに適応していないのも事実である。

・年齢のインフレが起きており、かつてより14歳ほど歳をとっても、若さは同じくらいであるという。本当だろうか。とすれば、1950年生まれの私は、14歳引いて現在55歳とみてよい。確かに、今55歳くらいといわれると、妙に納得できる。あと10年は元気に働きたいと思ってしまう。

・では、それを支えるアセットは何か。スコット教授は2つのアセットを対比させた。①タンジブル対インタンジブル(有形資産より無形資産)、②セイビング対プロダクティビティ(貯蓄より生産性)、③プロパティ対バイタリティ(財産より活力)、④ペンション対トランスフォーメーション(年金より転身)である。

・つまり、お金よりも、健康をベースに活力資産、転身資産がもっと大事になる、と提唱した。実物資産よりも知的資産、常に何かに挑戦して、楽しくしていく活動こそが、新しい時間の使い方であろう。

・学校(学び)→就職(働き)→老後(引退)の3ステージではなく、学校→就職→もう1つ就職→老後(自適)という4ステージをスパイラルに生きる。

・ひいてはマルチステージのワークライフバランスにもっていく。そうすれば、35歳までが準備期間、80歳まで働いて、その後も楽しい老境となろう。

・人生は多様である。人それぞれ、同じである必要はない、自分と同じ価値観を次の世代に押し付けないほうがよい。

・老後にあと2000万円が必要であるという金融資産不足が話題になったが、スコット教授は、金融資産もさることながら、次の新しい資産(アセット)を作るべし、と提唱する。

・70~80代で通用する自分なりの資産は何か。それを創ることを通して、マルチステージの機会を作っていくことが求められる。

・長く若く元気にいるには、どうしたらよいか。若さをサポートするテクノロジーは大いに発展しよう。若さを保つリ・クリエーションは、多様な産業の成長機会となろう。

・長寿人生にとって、時間の再構築は必須である。新しいアセット創りのためにも、教育・学習はますます重要になろう。スコット教授の言うライフシフトをぜひ実践したい。

 

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