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ユニクロの柳井会長が松下幸之助氏から学んだこと~パナソニックへの提言

   2018.12.17 (月) 1:08 PM

・パナソニック100周年を記念して、フォーラムと展示会が10月30日から5日間催された。初日にファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が講演した。テーマは「グローバルな変化を予見し、企業はどう変わるべきか」であった。

・柳井氏がまだ宇部市で商売をやっていた頃に、筆者は本業のアナリスト業務とは関係ない、システム開発の件で何度か訪問したことがある。もう20年以上前のことである。当時から目標は高く、現状のシステムに満足していなかった。どこか代わりのシステム会社を紹介してほしいというので、当時のソフトバンクの孫さんを紹介した。以来、二人の付き合いが始まった。

・柳井氏は幸之助氏に会うことはなかったが、著作は数多く読んで学んだ。水道哲学こそ産業人の使命であり、自らの原点とした。ユニクロが現在のように発展したのも幸之助氏のおかげであると感謝している。

・グローバルワンの全員経営では、社員全員が経営マインドを持て、そして水道哲学では、モノを豊富にして貧しさを克服し、楽しい生活を目指す。本当によい企業とは、今までにない新しい価値を提供する。新しい喜びを、衣服を通して感じるように、調和ある発展を目指した。

・ユニクロは、それを実践してきた。現在、売上高2.1兆円、営業利益2400億円、世界21カ国に2100店(グループのブランドを入れると3500店)を有する。内外で失敗を繰り返しながらも、世界に受け入れられてきた。

・目指したのは、衣服の階級を超えた“服の民主主義”である。日本の視点で世界共通の価値を追求し、「機能と美意識」を求めた。余計なものをそぎ落とし、暖かい、軽い、爽快など、日本の顧客のこだわりに応えようとした。

・ファッションは、人の魅力を引き出すものであり、衣服はその部品であると位置づけた。あらゆる人を豊かにする「ライフウェア」に行きついた、と柳井社長は語る。ライフウェア(Lifewear)がキーコンセプトである。

・ライフウェアで、衣服の常識を覆すことに全力投入してきた。シンプル、上質、普段着を、アジア発で世界に発信し、グローバル競争で勝ち上がっていくには、自分たちが何者であるかを明確にすることが最も重要であると明言する。

・では、パナソニックはどうすればよいのか。ここからがとんでもなく面白い。100周年のフォーラムに招かれて、パナソニックのこれからの経営について大胆な提言をした。こんな講演は聴いたことがない。

・第1に、パナソニックは、非常識なくらいの高い目標を持つべし。人は想定できることは大体できる。ちょっと頑張ればよいくらいでは不十分で、既存のやり方ではできない、途方もない目標を目指してイノベーションを起こせという。

・ファーストリテイリングは、年商80億円の時に、GAPを超えて、世界№1のアパレル小売企業になると決めた。現在、世界第3位まできている。

・第2は、自らの使命を明確にして、パナソニックならではのサプライズを目指せ。パナソニックの津賀社長は、B to Bでビジネスの拡大を図るというが、これでは小さい。B to Cで世界に通用する商品を夢として描き、そこで画期的であるべしと諭す。

・AIとネットが進化して人々の生活に入り込み、有史以来の変化が始まっている。かつての産業革命が、これからは生活革命となる。これこそチャンスである。世界がどう変わるかを見て、イノベーションの本質を追求すべし。幸之助氏はかつてそこを見ていた。当時まさに世界一の経営者であったと柳井氏は評価する。

・第3に、パナソニックは世界トップの企業になると決めよ、と提言する。その前に世界に通用するものを作るべし。バッテリーではなく、どうして車を作ろうと考えないのか。今の車ではない。世界を変える全く新しいライフカー(Lifecar)である。

・車がモビリティの手段というのは今のコンセプトであるが、将来は違う。生活を変え、豊かな新しい価値を提供する、あらゆる人々のためのライフカーを創ることを提案する。

・ライフカーを、高品質な生活のための道具として、世界の人々が買えるように供給する。ハイテク+世界+完成品である。消費者にブランドを理解してもらうことがカギである。iPhoneに説明書はないように、使って覚えてもらうというユーザーフレンドリーを追求する。

・もう1つは、ライフホーム(Lifehome)である。10年後に世界№1の住宅メーカーになると決めよ。常に世界トップになる、と思っていないとビジネスが中途半端になる。高品質、快適、大型、リーズナブルを世界標準で考える。ライフホームを圧倒的なスピードで世界中に供給する。1日で組立てられる家、すぐに住める家など、何でもありである。

・柳井社長は、1)Lifecarを世界に10億台、30万円で提供せよ、2)Lifehomeを世界に10億軒、300万円で提供せよ、と展望する。そうすればパナソニックは年商33兆円、経常利益5兆円の企業となりえようと予測する。柳井氏が命名したLifecar、Lifehomeというブランド(商標権)は、ただで使ってもよいと付け加えた。

・では、どうすればよいのか。何よりも、自ら変わり、世界を変えよ、と要求する。ビジネスのやり方を全て作り変えていく。顧客が一番、そこを軸に世界一を目指す。企業にヒエラルキー(階層)はいらない。直接のコミュニケーションが大事である。

・その上で、①誰が責任とるのか、②誰が推進するのか、③誰が実行するのか、をすぐに決めよ。同じ理念を共有し、その働き方ができる仕組みを創っていく。今から3年が勝負である。‘Change or Die’ 停滞は死に至ることを肝に銘じよと強調した。

・強烈な個性である。柳井氏のもとで働きたいか。躊躇するかもしれない。個人差はあろうが、彼がパナソニックに提言していることはやはり本質をついている。どの企業も、全員が経営マインドを持つべし。そういう企業を目指して、革新に挑戦してほしい。

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