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非財務情報による企業評価~4つの軸で質的に見る

   2017.03.06 (月) 9:51 AM

・ベルレーティング法は、①経営力、②成長力、③リスクマネジメント、④ESGの4つの軸で企業を定性的に評価する。中小型企業は、①、②、③の3つの軸で評価する。その方式は何度か紹介してきた。

・それとは全く別に、大手機関投資家が独自の企業評価方法を実践している。その話をきく機会があったが、考え方がよく似ていたので、驚くと同時に感銘を受けた。その骨子を検討してみたい。

・非財務情報をベースに、企業をどう評価するか。財務情報では業績予想を行うが、とりわけ将来キャッシュ・フローが重視される。しかし、ESGをはじめとする非財務情報が、企業の持続的成長(オポチュニティ)やそれを阻害する要因(リスク)を見るうえで、ますます重要になっている。

・これを投資判断情報として活用すると同時に、スチュワードシップ・コード(SSC)に基づく企業とのエンゲージメントに積極的に応用して、エンゲージメントの質的高度化に用いている。

・三井住友信託銀行の運用部門では、非財務情報の評価方式を「MBIS®」(エムビス)と名付けており、画期的な取り組みである。1)M (Management、経営)、2)B(Business Franchise、事業基盤)、3)I(Industry、市場動向)、4)S(Strategy、事業戦略)の4つの軸から企業を評価していく。

・それぞれの軸毎に評価項目を決め、それを5段階で評価していく。とりわけ強みに着目して採点する。アナリスト毎のバラつきについても、調整する工夫を加えている。業種毎のポジショニングの違いにも修正を加えていく。

・この仕組みを回すなかで、シニアアナリストやジュニアアナリストの個人差を、アナリストチーム全体の組織力として高めていくところに力点をおいている。ここがユニークで、大いに注目される。

・4つの軸毎に、5点~1点の評点をつけるので、企業の総合評価は20点~4点までばらついて分布する。組み合わせ上は、平均の12点が最も多くなる。これを3つのグループに分けて、T1、T2、T3の3段階で、上位、中位、下位としている。

・500社余りの実際の分布は、T1が20%弱、T2が60%強、T3が20%弱となっている。やはり2,6,2の分布となっているところが興味深い。

・非財務情報の投資判断への取り込みは、1)経済的価値として財務データにおろせるものは予想に織り込んでいくが、2)まだ織り込めないものは持続的な成長の基盤を支えるものとして、企業価値評価の補完材料として利用している。

・また、この評価の一覧表とその中身(コンテンツ)は、各々の企業と対話する時の材料となる。定性評価をもとに会社の課題が明確になるので、それに対してどのような手を打っていくのかについて、対話の材料とする。きっと話が弾むことになろう。

・どうしてこのような評価の仕組みができ上がったのか。運用部門の中小型株チームでは、そもそも業績予想を中心に会社をみることには無理があるということで、中小型企業を定性評価する仕組みを持っていた。この考え方を全体に応用することにしたという。

・実際の株価パフォーマンスはどうか。T1銘柄の方がよいパフォーマンスを示すかどうかは、まだこれからである。しかし、このMBISをエンジンとして、新ファンドを組成し、投資家にアピールしていく方向である。

・質的判断の精度が上がってくれば、T1 のパフォーマンスはよくなってくるはずである。ベルレーティングの経験ではそういえる。新しい仕組み(ビジネスモデル)の革新に基づき、エンゲージメント型の資産運用に取り組む三井住友信託銀行の運用チームに、大いに期待したい。

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