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キャリアと資産形成のための投資とは

   2021.09.21 (火) 9:12 AM

・30年後の未来はどうなっているか。そう問われても漠然としており、答えようもない。確実なのは人口で、2050年の人口は9700万人で、現在より2700万人ほど減少する見通しである。自分の年齢も30歳だけ年を取っている。

・でも、その時、社会はどんな姿になっているのか。自分のキャリアはどのようになっているのか。健康でいられるのか。老後の生活は十分なのか。不安だらけになってしまうかもしれない。

・では、30年前に戻ってみよう。1991年に立った時、30年後に対して何かイメージを持っていただろうか。過ぎた30年については、誰でも、いくらでも語ることができる。楽しかったこと、苦しかったこと、こうすればよかったこと、やらなければよかったことなど、まさに喜怒哀楽の出来事が浮かんでこよう。

・オリンピックが開催された7月に、元陸上選手の為末大氏の講演(野村資産形成研究センターによるWEBセミナー)を視聴する機会があった。スポーツ選手の人生から、投資家としての心構えを学ぶことができた。そのいくつかを考えてみたい。

・スポーツ選手としての寿命は比較的短い。ミッド ライフ クライシス(早々とくるピーク後の生活危機)をどう乗り越えるのか。自分の能力がどこまで通用するのか。努力と練習は積んできたが、いずれ変曲点がくる。

・よく考えると、人は変化に気が付いているのではないか。しかし、その兆しがあっても、なかなか行動を変えることができない。そういう局面にある時、為末氏は、誰かに変えられるよりは、自分で変えてしまえ、と語る。みんなと一緒では遅い、半歩先を行こう、と決めた。

・でも、どう変わればよいのか。これが分からない。未来は予測できない。スポーツのルールは、時に大きく変化する。今のルールにフィットしすぎていると、次の変化についていけない。早すぎる最適化は、次の変化に適応できない。身に付いている習慣をいかに変えていくかが問われる。

・スポーツ選手のセカンドキャリアを、いかにサポートしていくか。自分を知ると変化しやすい、と強調する。そのために、自分がやってきたことを、スポーツの用語を一切使わずに語ってみることを勧めている。これはおもしろい。

・陸上、水泳、野球などで、何をやってきたかではなく、その活動を一般的なことばで、社会活動に置き換えてみる。例えば、仲間と、能力を磨いて、人々に喜んでもらう、というように語っていく、そうすると、次のキャリアに向けて、自らの行動変容がみえてくるという。

・為末氏の場合は、無意識の中に、こだわりや思い込みがあった。100m走、200m走から400mハードルへ変更したが、これには勇気が必要であった。それは転向で、逃げではないか、と自問した。

・そこで、双方の競技を比較して、違いを書き出してみた。何が差別化要因かを見出して、独自の道を選んだ。彼は「危険は環境であるが、恐れは物語である」と語った。

・独自の道を選ぶことは、別の可能性を捨てることでもある。実際やってみると、恐れは減っていく。一方で、危険はリスクとして分かってくる。こうした変化が連続していき、いずれ大きく変わることになる。

・では、いつ変えるのか。確信ができてからでは遅い。挑戦には、失敗の可能性がついてまわる。しかし、納得しないことには勇気が出ない。このタイミングをいかに早めるかがカギである、と語る。

・外部から強要されるのではなく、自分から一歩変えていく。勇気を出すには、練習や訓練が必要である。まずやってみることが大切である。なるほど、誰にでも共感できる話であり、投資家としての心構えとしても、そのまま通じるところがあろう。

・長生きの時代である。90歳になって生きている確率は、男性で30%、女性で50%である。つまり、10人に3人、あるいは10人に5人は、まだ生活者として活動している。

・自分がそうなるかどうかは分からない。それでも、健康寿命、資産寿命は長く保ちたいものである。資産寿命はお金だけでない。住む家はもちろん、人としての知的資産や社会とのつながりである社会関係資産も含まれよう。

・資産を形成するには、投資が必要である。金融投資、健康投資、人的資本投資など、さまざまな要素がありうる。変化を恐れるのではなく、訓練をしながらリスクを見据えて、一歩を踏み出す。それを積み重ねて、大きな変化に結びつけていく。

・人生後半のキャリアを歩みながら、多様な資産形成のために、継続的な投資を実践したいものである。それこそが、サステナブル(持続可能な)投資であろう。

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