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モビリティのDX 3.0とは~新たなパラダイム

   2021.07.12 (月) 3:08 PM

・情報を運ぶモバイルに対して、ヒトやモノを運ぶモビリティをいかに変革していくか。モバイルの次はモビリティという認識のもと、事業領域は急速に広がっている。「世界デジタルサミット2021」では、この領域の議論も活発であった。MaaS(Mobility-as-a-Service:移動のサービス化)として、いかにBM(ビジネスモデル)を創り上げていくか。

・クロネコヤマトの宅配便はすでに生活に定着しているが、次はどうなるのか。最強のネットワークを作ってきただけに、次のイノベーションを進めるに当たって、既存の仕組みが制約とならないか、という懸念がある。

・ヤマト運輸は、トラックで運ぶ有人ネットとDXを駆使する無人ネットに、新たなイノベーションを起こそうとしている。顧客第一を基本に、次なる企業変革(CX)を実現するには、自前主義に拘らず、世界のベスト企業を組んでいく、と牧浦専務は語る。そのために、1000億円のDX投資を行うと決めてスタートさせた。

・クロネコヤマトは40年前に開発された商品サービスである。最適ではあるが、‘未来の敵’がいるのではないか。R&Dを進めても、新たなD(ディスラプション:破壊)で、クロネコヤマトのBMが一気に崩されてしまうかもしれない。まずは現場でAIを活用したDXを進め、ハイブリッドな展開を開始した。

・Mobility Technologies(モビリティ テクノロジーズ:MoT)の川鍋会長は、日本交通の3代目社長である。タクシーのDXをどう進めるのか。昨年DeNAと連携して、互いの部門を切り出し、MoTを新会社として設立した。日本交通のDXではなく、タクシー業界全体のDXを推進する方針である。

・タクシー業界の売上高は、コロナ禍で4割減となったが、その中でタクシーを呼べるアプリは1.5倍へ伸びている。ベテランドライバーが流しで稼ぐ経験と勘が通用しなくなっている。今どこに客がいそうか、というデータ解析に基づくAIナビが有効になりつつある。

・ドライブレコードの機能も充実してきた。どのようなルートを走っているか。一時停止などのルールはしっかり守っているか。どこを走れば乗車率を高められるか。こうしたところにもAIが使われ始めている。

・タクシーはヒトだけを運ぶのか。相乗りはいけないのか。コロナ禍にあって、食事を運んでもよいということになった。自転車で運べない食事を、スムーズに届けることができる。では、もっといろいろなモノを運んではいけないのか。DXによって、バイク、乗用車、トラックなどの境界が曖昧になってこよう。

・ZMPの谷口社長は、創業20年、現在は宅配ロボット(DeliRo)に力を入れている。自動運転が進みつつあるが、ロボットが路上を動いて、家庭や店舗、オフィスにモノを届けることができれば、確かに便利である。

・運転免許を返納した高齢者が、一人乗りの「ラクロ(RakuRo)」に乗って、道路を時速2㎞~4㎞で自動運転してくれれば、これもありがたい。すでに路上実験が始まっている。

・ここで何が大事か。谷口社長は、マップが最も重要であると強調した。ロボタウンを作っていくには精密なマップが必要で、それをサポートするカメラ、センサーなども普及してこよう。

・ロボタウン構想は、中央区や、谷口社長の出身である姫路で進めている。地方創生にも役立とう。実際、ラクロで安全に病院通いができれば、利便性は大きく高まろう。

・宅配ロボは人と共働する、と谷口社長は語る。人が運ぶか、ロボットが運ぶか。ラストワンマイルを担うのに、ロボットの活用は十分ありうる。また、ラクロが実用化すれば、公共サービスの隙間を埋めることができよう。MaaSの1つのサービスとなろう。

・ロボットをモビリティとして活用するには、ロボット単体では無理で、それを支える社会インフラを作っていく必要がある。地図も2次元ではなく、ビルの中もイメージして3次元にしていく必要がある。こうした社会インフラ作りを含めて、スマートタウンが形成されることになろう。

・リアルな組織に、バーチャルなサイバー空間をどう持ち込むのか。ITやDXといっても、現場に馴染まないことも多い。ヒトは保守的である。公共の自治体で働く職員、高齢の住民にとって、新しいデジタルサービスの導入は馴染めないかもしれない。

・ZMPの谷口社長は、地域を巻き込んでいくには、自治体のトップと徹底的に話し合う。どういう町にしたいかという点を突き詰めていくと、新しい発想との共通点が見えてくるという。

・旅客運送業は半分IT業界になってきた。会社もIT企業に変身していく必要がある、と川鍋氏は強調する。顧客に便利で、働き手にも優しい仕組みを開発していこうとしている。

・MoTの川鍋社長は、日本交通とDeNAではそもそも文化が全く異なる。合弁で新会社を作った当初、互いに馴染まない面もあった。ところが1年を経て、何が社会的課題かという点を突き詰めていくと、PMI(統合後の経営)が一気に融合に向かい出したという。共通課題のソリューションを通して、新しいアプリやサービスを作り、それが融合の糧となっている。

・日本のDXの課題と何か。海外に比べてスピードが遅い。コロナ禍でスピードアップが図られているが、まだまだである。①最速でやる、②数多くやる、③やってみると当たり前になる、というのが成功パターンのようだ。

・その逆もある。そもそも腰を上げない。PoC(概念実証)ばかりで実践に入らない。試みにやってみても、事業としてのサステナビリティ、マネタイズを十分描けない。ここに格差が生まれる。

・NRI(野村総合研究所)では、DX1.0をプロセス改革、DX2.0をBMの変革、DX3.0をパラダイム変革、と名づけている。現在多くの企業は、業務プロセスの変革ではなく、BM(価値創造の仕組み)の変革が問われている。今ここへの挑戦でしのぎを削っている。

・その先がある。DX3.0は、パートナーと社会的課題の解決に取り組む大型のDXである、とNRIの此(この)本(もと)社長は語る。モビリティの世界はグローバルに一大変革期を迎えている。既存業種新業態への脱皮に大いに注目したい。

 

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