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ポストコロナのトリプルESG~ビジネスチャンスはどこに

   2021.02.15 (月) 8:14 AM

・ウイルスとの共生はなかなか難しい。共生(シンバイオシス)とはまさに共に生きることだが、共に利益を得る相利共生ならよいが、一方のみが利益を得て、他方が害を被る寄生の場合は始末が悪い。もっともそれで宿主が死んでしまっては、寄生する側も生きられない。

・COVID-19の場合、早くも、毒性が強くなるのではなく、感染力が高いコロナウイルスに変異して、寄生が生き延びる余地を広めようとしている。ワクチンや治療薬で凌げるようになるにはもう1年を要するとみられるので、その間は寄生されないように避けていくしかない。

・生活スタイルは一変しつつあるが、急には変われない人々も多い。感染力が強いので、無症状の人々から何らかの接触を通してウイルスをもらってくることになる。恐い反面、しっかり防御すれば対応できるという方策もある。

・とにかく人と接しないことである。極力避けて、ひたすら消毒に徹する。一回のミスが感染を許すことになるので、覚悟をもって生活するしかない。生物学的には、種を守ることに互いに鎬を削るのであるが、個人としては自ら生き残ることが大事である。人にうつさないことも、あるべき姿である。

・これをESGの観点から見直してみよう。企業というレベルを超えて、国民生活、政府・行政などさまざまな組織運営においても、同じことが問われよう。

・Gの統治からみると、有事の危機的局面にあっては、リーダーシップの発揮が最も重要である。しかし、初めての事態に向き合って、先手を打つということは多くの場合できない。知恵を集めるにしても、後手後手になってしまう。

・常に最悪の事態を想定して手を打っていくしかない。安易な楽観は許されない。それでも価値観の違いは出てくる。生活者の生存を守るには経済を無視できないとなれば、感染者をゼロにはできないので、医療崩壊の前でとどめるしかない。

・企業でいえば、クラスターを発生させないことである。コロナに感染することは誰にでもありうる。慎重な行動をとっても、動いている限り感染の可能性はある。その一人が多くの人々にうつすとクラスターになるので、それを止めることである。濃厚接触者をすばやく隔離できる組織能力が問われる。企業の危機管理能力が問われるが、手を打っている企業は多い。

・Sの社会では、人権をベースにした働き方とサプライチェーンの守りと攻めが問われる。B to B、B to C、D to Cのいずれにおいても、無人ならばよいが、対面で接することをいかに減らせるかがカギとなる。

・外資系企業では、東京から地元の故郷に戻って、もう半年以上そこで仕事をこなしている人がいる。オフィスワーカーならリモートワークがやりやすいというレベルを超えて、どのビジネスにおいても全面リモートを検討すべきであろう。

・イノベーション(仕組み革新)はそこから生まれてくる。IoTで自動化は進む。でも、クリエイティブな仕事はやはり人間が担う。人が集まってワイワイガヤガヤやらなくても、創造性が発揮できるのではないか。リモートで臨場感をもってワイガヤをやればよい。

・デジタル化は加速しよう。DX、ロボテックス、BD、AIはそれぞれの分野で当たり前に使われるようになろう。一大産業が生まれてこよう。ここでも生産性がカギを握る。

・DXを進めても、やっぱり集まって人手で仕事をしていた時には及ばない、という企業はいずれ競争力を失って、やっていけなくなろう。DXを独自に活用して、生産性が上がり、仕事が楽になって、新しい仕事に挑戦できるようになる企業がすばらしい。

・Eでは、3つ考える必要がある。1つ目のEは環境である。CO2の削減、気候変動への対応はもちろんである。人が行動することから、地球環境に悪影響を与え、ひいては自らのサステナビリティも脅かされるというのであれば、感染症もその1つである。SDGsにおいても、感染症は明示的な課題となった。

・次のEは、教育(Education)である。Sとも関わるが、人々の能力開発は喫緊の課題である。デジタルデバイド(デジタル機器が苦手なことから生じる情報格差)を減らす必要がある。DXを担う人材は圧倒的に不足しているので、DX教育は大きく広がろう。

・小中学校からのGIGA教育(Global and Innovation Gateway for All)はスタートしつつある。DX高校が必要になり、大学においてもDXをあらゆる学科に取り入れる必要があろう。ここもビジネスチャンスである。

・今の若者は、デジタルネイティブ、SDGsネイティブといわれるが、それはまだ一部であろう。各年代において二極化が起きており、DXに取り残される層は、生産性の低い仕事にしか就けないことになる。

・3つ目のEは、エンターテインメント(Entertainment)である。生活でも仕事でも、楽しくなければ面白くない。報酬とは労苦の見返りである、というのでは人は寄ってこない。まして、安い給料でこき使われる仕事というのは、魅力がないので人手は集まらず、企業としては衰退していこう。

・日本はゲームやアニメに強い。これらのコンテンツは世界にも通用している。なぜ競争力が高いのか。産業の集積度が高く、すでに人材や知財が揃っているという見方がある。クリエイターが切磋琢磨して、コンテンツを競っている。多くの失敗作の中からよいものが生まれている。

・一方で、ゲームやアニメの開発現場にはかなりの差がある。アイデアはクリエイターが作るにしても、それを商品やサービスに仕上げるのに、かなりの人手に頼っている。ここをいかに自動化(IoT)していくかもテーマである。

・もう1つの側面は、ゲームを楽しむのにマニュアルはほとんどいらない。なぜなら、ゲームをスタートすると、次にどうやればいいかは、ほとんど誰にでも分かってくるからである。このゲーム感覚を、B to Bのビジネスに取り込む動きが出ている。

・B to Cのスマホの方が、使い勝手がよいという経験は誰も持っていよう。一方で、B to Bの業務用のソフトやオペレーションになると、マニュアルが膨大でかなり訓練を積む必要がある。場合によっては、作業途中で専門家やコールセンターに問い合わせる必要がある。

・このUX(ユーザーインターフェース)を、ゲームソフトのように使いやすくするという動きである。そうなると、誰でも業務用ソフトが簡単に使えるようになろう。将来、EVもそれに乗るのに運転免許証などいらなくなるかもしれない。

・NRIの木内エコノミストは、コロナショックの禍を福に転じるには、1)DXでキャッシュレス化を進め、2)東京一極集中から地方への分散を図り、3)サービス業・中小企業(飲食、宿泊、小売り、卸売りなど)の構造改革を進めるべし、と提言している。

・いずれも日本の潜在成長力を高めることになるからである。ESGの推進をビジネスチャンスに結び付け、生産性の向上を実現できる企業に大いに投資したい。

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