eスポーツの成長~BM(ビジネスモデル)のカギは
2019.07.01 (月) 9:02 AM
・eスポーツが世界的な隆盛をみせている。日本も立ち上がりが本格化している。6月に、アナリスト協会で日本eスポーツ連合の浜村副会長の話を聴く機会があった。eスポーツとは何か、ゲームとは何が違うのか、若者を捉える成長産業として注目できるのか、という点について考えてみたい。
・今や高校や大学に、eスポーツのクラブができている。部活やサークルとして活動している。eスポーツは、エレクトロニックスポーツ(electronic sports)の略で、対戦型のビデオゲームを種目として扱う競技である。
・ゲームは個人や仲間で楽しむものというのが一般的である。任天堂の歴史をみても、ゲームは多様であり、ビデオ型ゲームもどんどん進化している。しかし、ゲームはスポーツなのだろうか。確かにルールがあって、対戦する上で、頭脳と身体をかなり使う。勝つためには練習も欠かせない。プロになるには、努力と共に才能も重要である。
・eスポーツにもプロがおり、優勝賞金を目標とする。対戦成績が重要なので、たえず訓練し、体調も万全に整える。五感をセンサーに、神経を情報網に、頭脳で判断し、手足をアクチュエーター(制御機器)として、ビデオゲームの一方の当事者として参戦する。ゲームではあるが、それをスポーツとして成立するようにシステム化した。
・eスポーツの公認条件は、①競技性、②稼働実績、③大会の継続性、④興業性にある。具体的には、3ヶ月以上〈稼働実績〉がある〈競技〉ゲームで、ゲーマーが対戦する〈大会を継続的〉に開き、見に来た観客からお金を徴収して〈興業を行う〉。
・ゲームにはいろいろある。FPS(ファースト パーソン シューティング:自ら主人公として戦う)、TPS(サード パーソン シューティング:第三者の主人公の視点で戦う)、RTS(リアルタイム ストラテジー:大局のストラテジーで戦う)。
・NOBA(マルチプレイ オンライン バトル アリーナ:メンバーが役割を持って、敵の本拠地を取り合う)、スポーツゲーム(バスケット、サッカー、アメフトなど)、レーシング(車、オートバイ、自転車、飛行機など)のように多様である。
・eスポーツの場合も、アマとプロの違いは、収入を稼ぐか稼がないかという点にある。これを別の角度でみると、1)スポンサー、2)広告、3)入場料(チケット)、4)グッズ販売、5)会員など、さまざまな形で売上を上げようとする。
・ゲームといっても、草野球のように自分達だけで楽しむのと、球場で一般客の中で戦うのでは、盛り上がりが全く異なる。まして、興業としてプロの技で観客を楽しませ、ファンを作るとなるとレベルは圧倒的に違ってくる。地域や国内大会だけでなく、世界大会でメダルを争うとなると、テニスの四大大会にようになってこよう。
・世界のeスポーツ市場は、2019年で1200億円と予想され、収入の主な内訳は、スポンサー42%、メディア放送権23%、広告17%、チケット・グッズ9%で構成される。ネットで放送されると、5.5億人が見る。このうち常連2.0億人、一般2.5億人で、常連はアジアが多く、地域別ではアジア57%、EU16%、北米12%、その他15%という構成である。
・産業としてみると、米国ではeスポーツ専用のアリーナが建設されており、欧州の主要国でもeスポーツのリーグが作られている。野球やサッカーのようなスポーツシステムとなっている。eスポーツのゲーマー(アスリート)はたえず身体を鍛えており、アマチュアのように遊びで夜更かしをするような不健康な生活からは程遠い。
・eスポーツの賞金は年々高額化している。数億円の賞金も珍しくない。日本はまだ遅れている。これまでは、特定の施設でeスポーツを行うと、新しいイベントでありながら、賭博法、風営法、景表法など、伝統的な法律に縛られた。これをクリアするために業界団体としてプロライセンス制度を制定し、eスポーツが活発に活動できるようにした。現在、日本には150名近いeスポーツのプロが育っている。
・筆者の知っている企業でも、新卒が1年足らずで会社を辞めたいといってきた。会社サイドは引き止めようとしたが、eスポーツのプロになるということであった。大学で新入生がeスポーツサークルに入ったという話も身近にある。
・eスポーツの日本の団体、アジアの団体、世界の団体は、それぞれ大会を主催している。ゲーム会社は、eスポーツとして十分に使えるゲームの開発やマーケティングに力を入れている。大会のスポンサーになったり、ゲーマーの教育・研修をサポートしたり、スタジアムを準備したり、いろいろ力を入れている。
・eスポーツには若者が集まり、人気がある。当然メディアも取り上げ、放映権も重視される。若者にとっては、自分でも夢中になれるゲームからスターが生まれていく。
・では、ゲームは遊びではないか、格闘技は野蛮ではないか、ゲーム脳は健康によくないのではないか、ゲーム中毒は社会的に問題ではないかなど、さまざまな批判がありそうだ。
・何事もやり過ぎは問題であるが、そもそもスポーツは競技(ゲーム)であり、単なる体育ではない。フェンシングはスポーツだが、ゲームでもある。リアルなゲームかバーチャルなゲームかの違いはあるが、バーチャルなものでも体を使わないゲームはない。
・バーチャルなゲームは男女、年齢に関係がない。ハンディがない。5Gになると通信速度が大幅に上がるので、場所も関係なくなろう。
・eスポーツはアマとプロの垣根が低い。リアルの世界のAKBのような身近な存在として、人気が出ている。自分もやる→プロが出る→それを見る、という流れにおいて、観客がビジネスモデル(BM)カギを握る。
・eスポーツに関わる企業がますます増えてこよう。①スポンサーになる、②施設やアスリートをマネージする、③広告やブランドに活かす、という活動を展開しよう。eスポーツのエコシステムが大いに発展することを期待したい。