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個人投資家にとって大事なこと

   2017.05.27 (土) 4:11 PM

・5月に、7回目の義援金セミナーに参加した。2011年の東日本大震災で被災された方々を応援しようという趣旨である。株式セミナーに参加して頂き、1口3000円の募金をお願いした。参加者は株式投資に関心のある個人投資家である。

・パネラーとして、何を話したか。自分が実践している「個人投資家として大事なこと」についていくつか取り上げてみたい。

・第1は、日本株のポートフォリオを自分で作ろう、という点である。10銘柄のポートフォリオを自分で作ることを一から考える。いいと思う個別株にバラバラ投資するのではなく、2年くらいかけて自分がよいと思う企業の株を等金額で買っていく。

・2000円の株を100株買うとすると20万円、これを10銘柄だから200万円となる。まず買いたい会社を選んでいく。次に、その会社を安く買うのがコツである。しかし、いずれもそう簡単ではない。

・自分が納得できるよい会社を1社ずつ選んでいく。次に、マーケットが下がって皆が弱気になっている時に買う。ベストのタイミングは中々選べないのだから、自分なりにここぞと思った時に動けばよい。

・私の場合、1つのポートフォリオは8銘柄で構成されており、その中にはエムスリーや東祥が入っている。このポートフォリオは2年で20%強上昇している。もう1つのポートフォリオは10銘柄で作っており、かつて自分が働いていたNRI(野村総合研究所)が入っている。2つ目のポートフォリオのパフォーマンスは5年で40%近く上がっている。

・投資を本格的にスタートさせるには日本株がよい。会社の中身がよく理解できる日本の株式から始めないと、納得がいかないからである。何をやっている会社か、経営者は信頼できるか、利益が伸びる会社かなど、身の回りからイメージできて、情報がそれなりに得られる会社がよい。

・今の独立リサーチ会社を設立し、アナリスト活動を始めて6年ほど経つ。現在、15社のアナリストレポートを書いている。累計で20社ほど書いてきたが、5社は卒業している。他社に買収されたり、大きく成長して多くのアナリストがカバーするようになったり、社長が交代してフォローする必要がなくなった会社である。それらのレポートはやめている。

・6年間で1社ずつレポートを書き加えてきたが、それぞれ1回目のレポートを書いた時の株価をスタート台とし、15社に100万円ずつ等金額で投資したとすると、このポートフォリオは2.8倍の4200万円になっている。

・企業評価はA(十分よい)、B(ほぼよい)、C(今一歩)でレーティングしている。15社のうちAの会社は5社で、株価は平均5.9倍となっている。Bの会社は7社で3.8倍となり、Cの会社は3社で1.2倍である。Aの会社でも昨年公開した会社のパフォーマンスはまだ上がっていない。これからであろう。Bの会社でも、1社は0.8倍と2割ほど下がっている。

・しかし、平均してみると、パフォーマンスのよさは、A、B、Cの順である。つまり、よい会社と判断をした株価パフォーマンスが相対的によい。Cのパフォーマンスはよくないので、AとBから10社のポートフォリオを作っていけばよいといえよう。

・エムスリー、東祥、NRIなどは、将来利益が2倍、3倍に伸びそうである。当然株価も同じように動くものと期待され、有望である。エムスリーやNRIは大型株で、東祥はまだ中小型株である。

・A、B、Cはどのように評価するのか。大型株と中小型株では評価の視点は少し異なる。この点について、中小型企業の場合、企業のよさを、①経営力、②成長力、③パフォーマンスのリスクマネジメント力、の3軸から判断する。一方、大型企業の場合は、この3つに、④持続力としてのESGを加える。

・小さい企業の場合、ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視するといっても、それを別建ての軸にするよりは、経営力、成長力、リスクマネジメント力に包含されているとみた方が簡便である。一方、大企業になるとESGの重みが増してくるので、分けて評価していく。

・経営力では、何といっても経営者のビジョンやリーダーシップがカギを握る。成長力では、イノベーションを活かした新しい仕組み作りによるマーケット開拓が重要である。リスクマネジメントは、会社の業績が想定外にドスンと落ち込まないように、いかに手を打っているかが問われる。

・ESGは今最も注目されているが、これを株価評価に使うといっても、ピンとこないかもしれない。しかし、日本でもコーポレートガバナンス改革が、日本企業の収益力向上の要であると位置付けられ、制度改革が急ピッチで進んできた。

・ガバナンス改革で、中長期の利益が本当に増えるのか。その答えは、それぞれの企業がガバナンス改革にどれだけ魂を入れているかに依存する。形だけなのか、社長が真剣なのか。本気で取り組めば、企業価値の向上に結びつくことはほぼ間違いない。

・これらの4つの軸に沿って、企業を評点していく。それをA、B、Cと、3つのクラスに分けていく。大事なことは、誰か他人がやったものをそのまま鵜呑みにしないことである。自分でやってみることが最も大事である。何度も実践して、感度を上げていく。そうすると、自分なりの見方が固まって、身に付いてくる。

・特別の能力がなくても、誰でもできるようになる。定着すると、意外に使い勝手がよい。3つか4つの視点(軸)に分けて企業をよく見ていくと、企業の善し悪しが次第にわかってくる。分析とは比較と予測にある。いろいろな企業を同じ視点でみる。しかも将来を見て、1年経つごとにそれを振り返っていくと、良さ悪さがはっきりしてくるのである。

・こうしたやり方で、日本株について、ある程度経験を積んで行く。その上で、海外に視野を広げたい。しかし、海外について、日本と同じようにいかない。とすれば、投資信託を活用するのが有力な方策であろう。今度は上場会社ではなく、投信というファンドを会社と見立てて評点していく。

・いいファンドと思ったら少し買ってみて、その中身をよく見ていく。よさそうなら買い増せばよいし、今一つならやめればよい。私の場合は、グローバルゲノムやウォーターファンドのようなテーマ型投信や、アジア各国のカントリーファンドなど、8ファンドに投資してきた。5年で約30%のリターンという水準である。

・いずれのポートフォリオにおいても、現時点で大儲けではないが、一定のリターンは出ている。大損はしておらず、本人としては納得している。自分にとっての満足度基準は満たしているといえよう。

・今後とも、個人投資家の方々が、中長期投資の視点で成功体験を積み上げられるように、アナリスト活動を継続し、奮励貢献したい。

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